NO121-NO130

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NO121. おいしい水と臭気


今年は黒姫高原の雪解けが早く、冬の間冷たくておいしかった水道水も、徐々に水温が上がってきました。良く冷えた水道水は、味や臭い(水道法では匂いでなく臭いを使用)の感覚が無くなるのでおいしく感じます。水道水の臭気について久しぶりに考えます。

水道水質基準では、水道水の臭気については「異常の無いこと」と言う表現になっています。「臭気無し」ではありません。水道法の参考書でもある上水試験方法では、臭気の成分としてたくさんの項目が挙げられています。例としては、消毒薬などが原因のフェノール臭などの薬品臭や、土臭、かび臭や、藻臭、をはじめ 中にはメロン臭やキュウリ臭などもあります。ワインのソムリエなみの表現です。ヒトの臭気は結構細かい判別ができるようです。水道法では、記載は「異常なし」となっていますが、検査では塩素臭以外の臭いが何かひとつあれば異常ありと言うことになります。

実際の水道水の検査では、サンプルの水道水を、実験室で良く洗ったフタ付きガラスフラスコに入れ、50℃に温めて良く振って臭いを容器内に貯め、フタを取って鼻を近付けて臭いをかぎます。この時に以外と、ガラス容器を洗った時の臭いがお風呂の臭いのように感じたり、容器をつまんだ自分の指先の臭いが残っていたりします。このように、水道水の臭いは官能的なもので、そう言われれば臭うような気がするとか、何度もかいでいるうちに臭いを感じなくなってきます。法令が「異常なし」となっているので、はっきりしないときは都合よく「異常なし」とします。これが水道水は本来無味無臭であるべきと言うことで「臭気無」と基準に書かれていると検査はたいへん難しくなります。

水道水が必ず守らなければならない水質基準ではなく、目安である厚生労働省のおいしい水の基準では、臭気は「異常なし」ではなく、数値で 臭気強度3以下となっています。臭気強度(TON)の測り方は、事前の試験で標準液の臭いをみんなで嗅いだグループ内で、極端に臭覚の良い人と、極端に鈍い人を除いたメンバーをパネラーとして行います。臭気を測りたいサンプルを原液から1倍、2倍に薄めたもの、3倍に薄めたものと薄めていき、臭いを感じなくなる時の薄めた倍数のことを臭気強度とします。おいしい水の基準では、臭気強度は3以下ですから、3倍に薄めると普通の人が臭いを感じない水と言うことです。この時の臭いは、上水試験法の臭いと違い、臭いの種類は問いません。何か臭うかと言うことだけです。もちろん塩素臭以外です。

この時検査の方法で注意が要ります。サンプルを順に薄めていって臭いを嗅ぐと、鼻にいつまでも臭いが残っている様な錯覚で、臭いが無くなっても有るように感じます。こうした錯覚を防ぐため、無臭水を入れた容器と、サンプルの入った容器を分からないように渡し、無臭水と臭気のあるサンプルを区別できた時に正解とします。

水道水は必ず水質基準に適合しなけらばならないので、水質基準の臭気は薄めず測って「異常のないこと」なので、臭気強度では1に該当です。おいしい水の臭気強度の基準が3以下、3倍に薄めると感じなくなる臭気なのは臭気の無いことの水質基準と整合しません。実際は臭気の正確な測定は難しいのです。

上水試験方法の臭気の項目に金属臭とか鉄さび臭があります。錆びた赤水は飲んだ時、鉄錆固有の渋みがあり、金気味が在ると思います。一方化学では、鉄は水に溶けイオンに成るので、味は在るでしょうが、金属は1000℃以上に加熱しないと蒸発しません。金属に臭いは有りません。鉄錆の場合、錆の粉が舞い上がって鼻の粘膜に付着して臭いを感じるのでしょうか。生理的には金属は鼻の粘膜とは反応しないはずです。しかし、経験的に鉄棒や錆びたジャングルジムの固有の鉄の錆びた臭いの記憶があります。

鼻血の時も鉄棒の臭いの記憶と似た臭いがします。赤血球の鉄分の臭いと思っている人も多いでしょう。最近の研究ではこれらは鉄そのものの臭いではなく、鉄と皮膚が反応して分泌する揮発性の化合物の臭いのようです。それでも、蒸発するはずの無い物の臭いを僕も感じます。石灰の臭い、湿った風呂の壁の臭い、擦りガラスの臭い、蛍石の臭いなどです。配管に析出したスケールの分析では、化学分析の前に臭いでなんとなく推定することがあります。

明治の時期、化学の知識の無い医者が化学の領域を占めていた頃のいい加減な知識がそのまま残っていることもあります。カルキ臭などです。今でも水道水が臭いのはカルキ臭、塩素臭のせいというブログがあります。カルキと言うのは明治時代の塩素のドイツ語読みから来ています。昔は医者はドイツ語でした。化学では塩素水は臭いは有りません。塩素と水中の汚れのアンモニアなどが結合してできるクロラミンの臭いが原因です。

水道水で塩素臭と言われる物の多くは、残留塩素そのものではなく、水中に含まれる汚染物質のアンモニア類と塩素が結合してできるクロラミン臭です。アンモニアを無くせば臭気は減ります。水道水は本来は無味無臭であるべきです。臭いについては、個人差がたいへん大きく、臭いを感じる感度だけでなく、臭いを良い臭い、悪臭と、感じ方にも個人差が大きいです。悪臭であるアンモニア臭も、薄いと清涼感を感じる人もいます。

水道水の味についても、日本では、国内の水が軟水が多いためか、硬水より軟水がおいしいと思い込んでいる人がブログ上では多いようです。実際は海外の硬水を好む人も多いです。味も匂いも個人差が大きいので、おいしい水の数値はこれだと決めるのは困難で、おいしい水委員会の値も大まかな範囲を示しているだけです。むしろ水質ではなく、観光的な名水の方向に行っています。

水質検査では、残留塩素が邪魔になって、他の成分の測定を妨害する時、塩素を消す必要がある時はアスコルビン酸を添加します。ビタミンCのことです。これの応用で、水道水の残留塩素を消すのにレモンを絞れば良いと言うブログがあります。これがいつの間にか水道水の臭い消しにはレモンを絞るになっています。水道水は食品では有りませんので、おいしい水道水は無味無臭であるべきです。喫茶店や、レストランでレモンの味のするお冷が出た時は、おかしなブログの影響かと思っています。レストランでの喫煙は、健康のためだけでなく、食事の味にも関係します。これと同じで、レストランのお冷に味が付いているなんてたいへんおかしなことです。ヨーロッパのレストランのように有料で、時にはワインの方が安い、ミネラルウオーターを出すなら個性的な味でよいのですが、水道水を無料でグラスに入れて出す時は何も添加すべきではなく、またその水道水は無味無臭であるべきです。

そういう意味で、アメリカ大陸の国々で行われている水道水へのフッ素添加は、仮に健康上の効果があっても、おかしなことです。これを権力が認めると、今に水道水に放射能を持たない安定同位体を添加して、ラベルを貼り識別できるようにする、なんて言い出しかねません。何しろ今のこの国は、テロ防止と言う名目でなんでもござれですから。戦争準備をしているのになぜ戦争と言わずテロなんでしょう。戦争準備の割に熊本など災害の対応は下手ですね。熊本の災害地にだって自衛隊基地が2か所も在るのに、どうして避難所にできないのでしょうか。【分類:水道】

[ 2016/04/26 ]  『黒姫高原理科教室』 NO121. おいしい水と臭気

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NO122. 蒸留


前々回にお酒の蒸留に触れました。前回は、水道水の味見は、ワインのソムリエなみの臭気感覚が要ると話しました。香水も、蒸留と調香両方に深くかかわります。ソムリエは味と匂いの両方ですが、香水の調香士の嗅覚はすごいものです。さらに薬品の調整と同じように、混合によって新たな匂いを作ることができます。今回はその素材となる、精油、香水の原料となる、花のエッセンスオイルの作り方の話です。

「パヒューム(香り)」という映画があります。昔のパリの話です。並はずれた嗅覚を持った孤児の主人公が、香水作りを行う話です。今でも調香士と言う香水をブレンドする職業は有りますが、映画では香水の調合だけではなく、原料となる花のエッセンスオイルの製造方法も出てきます。花から精油を作るというと、バラの花を水蒸気蒸留して作る方法や、アルコールに漬けて抽出する方法がありますが、冷抽出法と言うのを、この映画で知りました。

花の香りは、精油と言う成分に含まれます。精油は水に溶けない油で、取りだす為にはいろいろな工夫があります。水に溶けるエキス分は、水や熱湯、アルコールで浸出できます。一方油は水に溶けないので、水で精油を抽出できません。注意が要るのはアルコールです。アルコールは水に溶けるので、油の仲間ではなく水の仲間です。ここで言う油は、水と油の関係の油、身近なものではサラダ油やガソリンです。

バラの花から香りの精油を取りだす方法は今でも水蒸気蒸留で行われています。大量の花を摘み取って集め巨大な窯に入れ、別のところで作った水蒸気を窯の下から入れて花を蒸して加熱します。精油は水には溶けませんが、熱すると蒸発します。花を加熱した水蒸気と一緒に、精油も気体に成ります。この蒸気を窯の上部から管で集め、管を外から冷やすと中の水蒸気が冷え、水になります。この時水蒸気と一緒に蒸発した精油も液体になります。精油は水に溶けないので、冷えて溜まった水の上に浮きます。これを集めてバラのエッセンスオイルとします。バラの花の香りはこの様にして、加熱して集めることができますが、花の種類によっては水蒸気を通して加熱すると、熱で香り成分が分解してしまうものがあります。そんな花の香りは冷抽出法で集めます。これが映画に出てきたので、初めて実際のやり方が分かりました。

精油は水に溶けない油なので、油は油を使って抽出します。その油はブタや牛の油を使います。熱に弱い香り成分の花は水蒸気蒸留出来ないので、ラードの中に漬けて香りを油脂に浸み出させます。トレーに油脂を塗っておき、その表面に香りを抽出したい花をいくつも埋め込みます。ラードや牛脂より馬の油の方が室温で柔らかく成るので、馬脂かもしれません。数日放置して、この香り成分が浸みこんだ脂肪を集め容器に入れ、アルコールを加えて振り混ぜると、今度は香り成分がアルコールに移ます。アルコールを室温で蒸発させれば香り成分はエッセンスオイルとなって濃縮します。アルコールがあるのなら、最初から花をアルコールに漬けて香りを抽出すればよいのではと思いますが、理由がありそうです。

アルコールは水の仲間と言いましたが、正しくは水と油の中間です。(化学では分子の極性と言います。水などは極性のある分子。油は極性の無い分子です。極性とは分子がプラスとマイナスに分かれている構造です。この極性のせいで、極性のある液体同士、無いもの同士は溶け易いのです。)アルコールは水と油の中間の、弱い極性を持っているので、水にも、油にも溶けます。溶け合わない水と油の入った液にアルコールを適量加えると、水と油が混ざります。この原理でガソリンタンクの水抜きに使うのはイソブチルアルコールです。

この冷抽出方法は化学で使う溶媒抽出方法と同じ原理です。いろいろな成分を含む水溶液の中から、取り出したい成分だけを取り出す方法です。水に溶けている成分には、水より油に溶け易い物が有ります。錬金術の時代には、油は牛脂でしたが、今では水に溶けない液体の油、溶剤は各種有ります。その中には、目的の成分だけを一番溶かし易い溶剤があります。その溶剤と、いろいろの成分を含む水を合わせて振り混ぜると取り出したい成分だけが溶剤に溶け出します。溶剤と水は置いておけば分離するので、溶剤だけを分けて、溶剤を蒸発させれば後に目的の成分だけが蒸発せずに残っています。この方法を溶媒抽出方法と呼び、分析化学でたいへんよく使われています。蒸留と違って加熱しないで分離する方法です。

液体にはそれぞれ沸点が決まっています。水の沸点100℃に比べエチルアルコールの沸点は78℃と低いです。水とエチルアルコールが混ざった液を加熱すると、まず先に沸点の低いアルコールが蒸発します。発酵で作った酒はアルコールの濃度があまり高くありません。これを蒸留するとアルコールが先に蒸発するのでこれを集めたものが蒸留酒です。(この時アルコールだけが蒸発せず、必ずわずかな水が混ざるのでアルコール100%の酒は作れません。)この通常の蒸留では、水より沸点の高い成分は、水の方が先に蒸発するので分離できません。

油の成分には、沸点が200℃や300℃と高いものがあります。こんな成分を沸点まで加熱すると、蒸発する前に高温で成分が分解してしまいます。これでは蒸留できません。こんな時は、富士山の頂上では水が100℃以下で沸騰する原理を使います。蒸留フラスコ全体を減圧ポンプで吸引して、圧力を下げて蒸留します。そうすると、100℃以下の低い温度で沸騰し、成分が熱で分解するのを防げます。減圧蒸留と言います。また水を入れたフラスコは100℃以上になりませんが、蒸留しているフラスコの中にさらに別に作った水蒸気を入れてやると温度が100℃以上になります。過熱水蒸気は100℃以上になるので、沸点の高い精油を蒸留できます。これを水蒸気蒸留と呼びます。これらの方法は、香水の原料の精油の製造方法だけでなく、分析化学の基礎的な方法となっています。

この蒸留と抽出、成分を沸点の差で分ける方法と、溶剤への溶解度の差で分ける方法は、蒸留器やフラスコを使った実験だけでなく、最新のガスクロマトや液体クロマトのカラムでも同じ原理で成分を分離しているのです。【分類:化学】

[ 2016/04/26 ] 『黒姫高原理科教室』 NO122. 蒸留

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NO123. 伝九朗用水


野尻湖は、長野県で諏訪湖の次に大きな湖なのに、周りの斜面から流れる小川の様な小さな河川以外、流入する河川が無いのかと不思議に思う。地学的にも、太古から在った湖ではなく、マンモスの時代はまだ草原で、その後火山の噴火でせき止められ出来た湖の様です。せき止めと言っても火山灰の堆積で、河川を溶岩がせき止めたようで明確な場所は分からない。江戸時代から人の手で農業用水用の溜め池として利用され、以前は長野市の水道水源にも成っていた。色々の目的に利用されているようですが、今は諏訪湖同様 水質悪化が問題のようです。長野市の上水道水源も水質や水利権の問題で、現在は奈良井ダムに変わっています。

連休に野尻湖を訪ねたら、湖岸すれすれまで水位が上がっていました。湖岸の食堂に入ると「4月初めにポンプが動きました」とオーナーに教えてもらった。地元の方はよくご存じのようです。ポンプアップの始まる時期は釣りのHPにも掲示があり、釣りマニアも知っているようです。野尻湖は普段は水位が下がっていて、湖面がずいぶん遠くなっています。野尻湖から流れ出る川には池尻川があり、湖を北に向かい、新潟との県境を谷状の低地になって流れている関川に、関川関所近くで注いでいる。関川に入るすぐ前に発電所がある。一方流入する河川は、実は河川ではないけど黒姫山から流れ出る鳥居川から引いた伝九朗用水が、東に流れ、信濃町インター付近の道の駅横で高速の下をくぐり、線路の上をまたいで野尻湖にそそいでいる。これが唯一の年中流れこんでいる水源です。

この用水も水質悪化で、結果野尻湖の水質悪化の原因になり、しばらく前から信濃町インターの道の駅の横で、水生植物園というビオトープを作り浄化をする町の計画が進んだが、今回水生植物園を訪ねたら干からびていた。申し訳程度の用水の水量なので、池尻川から流れ出る水量の方が圧倒的に多く、今満水の湖水は、夏の花火大会のころには干上がってくる。

ではこの時期の満水はどこから水が供給されたかというと、雪解け水で豊富な水量になった関川の水を、発電所の水車を逆にポンプに使って揚水したのです。春の雪解け水を揚水して貯めた湖水を、今度は池尻川に流し、同じ発電所を本来の発電に使うのです。こうした仕組みを揚水発電と呼び、余った電力を使って揚水して、電力の足りない時に湖に貯めた水を放流して発電するという説明を、よく見かけます。しかし余った電力などあるのでしょうか。貴重な電力を使って効率の悪い揚水をわざわざするのは、小回りのきく水力発電所を使って、小回りの利かない原発などの補完をする為です。

春先の雪解け水を溜めると言うと、ちょうど田植えに使えそうですが、新聞では野尻湖の水位が低く、農業用水から水田に水を引けないと言う記事が毎年出ます。どうやら農業用水より発電用水が優先のようです。野尻湖の揚水ポンプ場には新潟エリアの東北電力の水利権を書いた看板が立っています。野尻湖の在る信濃町は中部電力のエリアですが、発電所は東北電力です。

春先の野尻湖の満水を喜んでいるのは、釣り好きのバカ息子達だけの様です。むしろ長野市の水道水源で無くなったので、野尻湖は水質問題より、既存の農業用水と発電所の水利権争いに新たに余所から来た釣りマニアに発電を遠慮しろと言わせた方が良いのかもしれません。バカ息子と言いましたが地域にお金を落としてくれるし、魚が住める環境は水質浄化とも共通するので、外来種を持ち込まなければ、釣りマニアも野尻湖を守る側です。 夜間は電力需要が減るからではなく、原発などの調整運転ができないために電力が余るので、発電所は、深夜電力で揚水だけを行い、利水権は農業用水に譲り発電は農閑期にだけ行ったらどうでしょうか。

この時期、豊富な雪解け水を溜め池に貯める時期です。溜め池は貯水目的以外に、信濃町のお隣の飯綱町の霊泉寺湖や、黒姫山の登山口の古池のような鉄分を沈殿させる溜め池も在ります。鉄分は水道用水以外の農業用水でも、リン酸と結合してしまい肥料分を無くすため邪魔です。鳥居川にも、中部電力の小規模発電所がいくつかあります。いずれも施設の横には、水利権何トンと書いた看板があり、発電所の水路側の堰を開き、鳥居川の方はあまり水が流れていません。各地で発電用に水を優先させて、水無川に成っている所ができています。昔は水争いや水利権は、農業用水が優先だった様ですが、今は発電所が強いようです。黒姫山登山口の堰を見に行きましたが、ここでも鳥居川は水無川でした。

黒姫山や黒姫高原は、地下水が豊富な筈ですが、表面を火山灰が数メートルも覆っているので川や沢がありません。途中から湧水となって露出しています。山荘の一本下の道路わきにも湧水があり、そこを源流としいて沢が始まっています。今年も植物好きのボランテアさんが水芭蕉を移植しています。山荘でも人工の湿地を昨年から作りました。 そこで昨年、白馬に住む植物好きなペンションのオーナーから買った水芭蕉の苗は、「鶏ふんを与えてやれば成長します。」と言われたので、そのように育てたら元気に成長しています。

今年から、山荘では畑を作りハーブを育てることにしました。このあたり一帯は黒ボク土で、地面を掘ると真っ黒くろすけです。黒ボク土はその名のように、ホクホクな土で、すぐに団粒に成り、一見畑作に向いた肥沃な土壌のようです。さらにしばらく地面を放置していたので、表面には落ち葉が溜まり堆肥になっています。しかしこの土壌は実際は育ちが悪いのです。

黒ボク土は、同じ火山灰からできた肥料分の無い関東ロームの赤土と違って、植物の堆肥が混ざって黒く成った物で、有機物に富んでいます。ところが、火山灰の成分のアルミニウムがリン酸といったん結合すると離れず、作物にとってはリン酸不足になります。里の農家を見ていると、リン酸などの肥料の袋が、真っ黒な畑の横にたくさん積んであります。腐葉土も窒素分やカリウムは多いがリン酸は不足です。今のところ畑では野菜を作る予定は無いので、石灰を撒いて酸性土壌を中和しただけですが、いずれここにもリン酸の多い鶏ふんが要るでしょう。

畑を作る時、日照を良くする為に、横の樹木の横枝を切りましたが、畝を作るため、地中に埋まっている樹木の根を耕す時に切りました。その時切断した根から、次の日になっても根の先端側の切り口から水が浸み出てきています。かなりの水量で、子供のころ理科で実験した、ヘチマ水のようです。ヘチマ水の実験では、ヘチマを夏休みに学校の庭で育て、茎を切ってその先端を空の一升瓶に差し込みます。根側と葉側です。すると根側の方だけビンに水が溜まります。これがへちま水です。

植物が水を吸い上げるのは、葉の蒸散作用とか、導管の毛細管現象とかの説明がありますが、切断した根の切り口では、これらは当てはまりません。根圧と呼ばれる力で土壌から水分を吸い上げています。根圧は、風呂に入ると指先などの細胞内の濃い水を薄めるため、風呂の真水が吸い込まれ細胞が膨張してしわしわになる浸透圧のせいと言う解説があります。土壌中の水分に比べ、根の細胞の内部の水は、養分が溶け濃くなっています。

浸透圧とは、セロファンの膜を挟んで、真水と食塩水を入れると、まるで濃い食塩水を薄めるような方向で真水がセロファン膜を通過して食塩水に移動する力です。食塩水の濃度が低くなると浸透圧は下がります。土壌中の水と根の細胞内の濃い細胞液との間で浸透圧が生じます。セロファンには細胞の膜が該当します。根からの吸い上げは数日経っても続き、浸透圧が原因ならとっくに薄まっている筈です。まだ根は生きているので、根の細胞の呼吸エネルギーで積極的に吸い上げているように思います。間もなく吸い上げが衰えたので、やはり生物活性がかかわっていたようです。【分類:水】

[ 2016/05/26 ] 『黒姫高原理科教室』 NO123. 伝九朗用水

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NO124. 電力自由化


黒姫山に降った雨が、地下水となって地中を移動して、湧水となって地表に現れ、河川に注ぐのに何十年もかかると言います。ここで言う水とは、個々の水の分子を指している様です。

私達が水と呼ぶ時、例えば、「黒姫高原の水は鉄分が多いです。」と、言う様に水質を指す事があります。また、地下水の移動速度は・・・と、言う時の水は水の分子を指します。水は色々の成分を溶かすので、それらが溶けている状態も水と呼んでいますが、化学ではこれは水溶液と呼びます。

水の水質はこの水溶液の化学です。今回は水質ではなく、水の分子の話です。水の分子は液体の水以外にも、気体や固体にも成ります。

自然の水の循環でも、水蒸気が雲に成ったり、海水が氷に成ったりして循環します。地下水が山から平地まで浸透するのに何年もかかるのを長いと思うかもしれません。

雨や川などの流れに成り居動する場合は移動速度は速いのですが、土壌の中を浸透する水の分子の移動速度はそれ程速くはありません。むしろ雲に留まったり、湖沼に留まり生物に吸収されたり、氷になって氷河に成れば何万年も固定されます。自然の水の循環速度は遅いのです。

コップの中の水は静止しているのでしょうか。振り混ぜたり、熱で対流しなくても水はわずかに動いています。ブラウン運動という動きです。水面に軽い粉のような粒子を浮かせると、顕微鏡で見て分かる程度ですが、水の分子の動きによって、浮かんだ粒子も動き回ります。方向の決まらないランダムな動きです。

室温程度の温度でも水分子にとっては十分熱エネルギーがあり、その熱で水分子が動き回っています。しかしコップ全体では水分子の動きは、ほぼ静止していて、勝手に混ざりません。コップの中に食塩を入れても混ぜなければなかなか溶けません。

ブラウン運動でわずかに動いているので、ゆっくりと溶けていきます。濃い食塩水の上に真水をそーっと入れると、掻き混ぜない限り二つの液は混ざりません。

池の中で、冷たい水の層と温かい層が混ざらなかったリ、河口で重い海水と軽い河川水が上下2層に成って混ざらないことがあります。水の個々の分子の動く速度は遅く、コップサイズの世界では、ほとんど動いていません。

湖の水が混ざるのも、温度差で対流が起き、水の塊として混ざるので、対流の無い溜まり水は水の分子の動きだけではほとんど混ざりません。

ところがこの水の中を自由に動き回るものが在ります。ひとつは電気です。水は電気を通すので、電気は水中を瞬時に伝わります。この電気以外にも水中を自由に動き回る物が在るのです。

水素イオンです。水の分子はH20で表わされる様に、2個の水素原子と1個の酸素原子で、できています。この水の分子は、水素イオンH と水酸イオンOHに分かれます。水素イオンはプラスの電荷を持っているので、H+と書きます。水酸イオンはマイナスの電荷なのでOH-です。

水の分子は一部は、普段でもH+イオンとOH-イオンに分かれています。H+イオンは酸性の性質の原因です。H+イオンの濃度が高くなれば酸性が強くなります。

残りの多くの水分子はイオンに分かれてはいませんが、イオンに成り易い性質は持っています。1個の水の分子の中で、H+に成る部分はプラスに、他方はマイナスの部分と成り、分子に電気的偏りができています。これを分極と言います。

水の分子はこの様にプラスの部分と、マイナスの部分が在るのが特徴です。食塩の結晶を塩化ナトリウムと呼ぶ様に、ナトリウムイオンと塩化物イオンからできています。

ナトリウムイオンはプラスの電荷を持ちNa+。塩化物イオンはマイナスの電荷を持ちCl-。 水の分子のマイナス部分は、プラスの電荷のNa+イオンを。プラスの分極側はCl-を引き付けます。 水の中の食塩の結晶はプラスとマイナスのイオンに分かれて溶けていきます。これが水が塩類を溶かすメカニズムです。

又、水の分子同士は、プラスの部分と別の水分子のマイナス部分が隣同士でつながり、これが鎖状や網状に長くつながった構造をしています。

こうした水分子同士の結合を水素結合と呼んでいます。(クラスターではありません)

水の分子が、水素イオンを間に挟んで長く連なった結合です。

水は水素結合の無い他のアルコール等の液体に比べて蒸発し難いのは、水素結合でつながっているからです。

アルコールは室温で蒸発しますが、水は100℃まで液体のままです。水が0℃から100℃までの間、液体の状態で存在するので、細胞に水を蓄えた動物や植物、バクテリアが生存できるのです。もし水がアルコールのように低い温度で沸騰したら、熱帯では生物は生存できません。

酸と言うのはH+イオンを持った化合物です。酸を水に加えるとH+イオンが一気に増えます。この時水の中を伝わっていく水素イオンの動きを見てみます。

水に、水素イオンを含む酸を加えると、水の性質は水素イオンH+が増えpHが下がります。この時の水素イオンの伝わる速さを実験で測ると、凄く速いのです。水の分子の中を水素イオンが動いていくとすれば、そんなに早く動けないという速さです。

実はこの時、水素イオンは水の中を実際には動いてはいないのです。水素イオンは水の分子に2個ずつあります。水分子の集まりでは水素結合で、この水素イオンが水素結合でズーッとつながっています。

水分子の集まりにやって来た水素イオンは、最初の水の分子にくっつくと、プラスの電荷だけを渡します。その電荷が隣り合った水素イオンを伝わり玉突きで幾つか連なった球に球を当てると、力だけが伝わって、まるで当てた球が球の中を通り抜けた様にして、最後の球が飛び出して行きます。

水分子の中を電荷だけが伝わって、最後の水分子が受け取った電荷で水素イオンが飛び出していきます。 玉突きと同じ様に、見かけ上、水素イオンが水の分子の中を凄い速さで通り抜けた様に見えます。

水に酸を加えると酸性に成りpHが下がりますが、この時pHを下げている水素イオンは酸の分子にあった水素イオンではなく、こうして玉突きで押し出された水の分子に最初から在った水素イオンなのです。ですから水素イオンに変わりはありません。

話が飛びますが、電気は電線の中をどうやって伝わるのでしょう。電気は電子と言う素粒子の動きです。電子はマイナスの電気を持っています。

電気は昔からプラスからマイナスへ流れることに成っているので、見かけ上、電子の流れの逆が電気の流れです。電気を通し易い銅線は銅の元素でできていて、自由電子と言う電子がたくさん存在しています。この電子に電圧をかけてやると電子が移動し、電流が流れます。 長い電線では電圧は移動するにつれ、下がりますが、その中を流れる電気の量、電流、は変わりません。

電線を流れる電気の早さはどれ程でしょうか。スイッチを入れると瞬時に点灯する様に、電気の伝わる速さは光の速度に近い速度です。と言うことは電線の中を電子が光に近い速度で動いているのでしょうか。電子は光と違って、水素イオンや水分子、銅の原子よりは小さいですが、重さのある粒子です。

一応、金属の銅は銅の原子が詰まっていますが、原子同士の間に隙間があり、そこを電子が動き回ることができます。でもその動く速度は水の分子の動く速度なみです。1秒間に数センチで、とても光の様に秒速30万キロなんて進みません。

電気の伝わる速さは、金属の中を電子が移動する速さではなく、電場が進む速さです。電場と言うものは、空間を電波が光の速度で進むときにも存在します。

水道管の中を流れる水は、水の分子の移動する速度ではなく、水圧で進みます。例えると、トコロテンの押し出しです。入口で圧力をかけ押し出してやると、長い水道管を圧力が伝わって、出口から出口付近の水が押し出されます。長い水道管の一端でバルブを開くと、圧力が伝わり出口から水が押し出されます。水道管の中を水の分子が移動していくよりは十分早いのですが、金属の長い棒を一方で押すともう一方で飛び出す様に瞬時では有りません。圧力が伝わるにはわずかに時間がかかります。一方、電気の伝わる速度は電場の伝わる速度ですから光の速度です。

 最近、電力自由化で、従来の電力会社以外のガス会社や燃料会社から、「安い電力を契約しませんか?」と誘いがあります。

しかし日本の電力自由化は不完全で、発電だけ自由化で送電線は従来の電力会社の送電線を利用するしか選択できません。

「私は原発の電気は使いたくないので、新電力と契約します。」と言っても、 電線を伝わってくる電気がどこでできたかを選べる訳では有りません。 何の為の自由化なのか(?)、良く判りません・・・【分類:水】


[ 2016/05/27 ] 『黒姫高原理科教室』 NO124. 電力自由化

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NO125. ボルタの電池


この時期、黒姫高原ではロードレーサーをよく見かけます。チームで練習や、ヒルクライムを一人楽しんでいる方が多く成りました。私も金沢時代のロードを持って来ましたが、冬の間は室内展示状態だったので、そろそろ乗らなくては!です。黒姫高原はアップダウンが有って、練習にはもってこいですが老体にはきつく、昨年はもっぱら里の方に向かって走りました。奥さんの方は電動アシスト自転車です。黒姫高原で暮らすことに成って、アップダウンの多い土地用に購入しました。街では電動自転車は、モーターが一定の速度以上では働かないような機能があり、あくまで坂道のアシスト用ですが、坂の多い黒姫高原では原付自転車並みのスピードとパワーです。若い頃と違って、奥さんのアシスト自転車と一緒に黒姫高原をサイクリングすると、追いつけません。

この電動自転車は、1回の充電で古間へ買い物に行く程度なら十分で、帰りの登りは楽な様で価格のこと以外は優れ物の様でしたが、使っていると幾つか問題点があります。

まず重たいのです。ロードレーサーどころかママチャリの倍ほどの重さ、25kgはあります。自転車の便利さは、坂道で疲れたら押して歩く、さらに階段ではかついで上がったりしますが、それは当然無理、ママチャリより重いので、バッテリーが空になったら漕ぐのはたいへん。バッテリーの重さと言うより、モータ周りを頑丈に作ってあるせいです。

雨の日には乗らないように説明があります。確かにバッテリーの接点は防水になっていません。モーターも水につかったら絶縁されていないようです。

もうひとつ、リチウムイオン電池の問題があります。パソコンなどの電源用リチウムイオン電池の発火がよく起きましたし、最近ではボーイングの787旅客機がバッテリーの発火でデビューが遅れました。本当に安全でしょうか。ハイブリッド自動車に大量に使われていますが、使い終わったバッテリーの処分はどうするのでしょうか。乾電池では、回収の問題で水銀を使わない物に変わりましたが、リチウムイオン電池の回収はできるのでしょうか。

昔は、最初に実験するのはボルタの電池でした。中学の理科です。希硫酸を入れたビーカーに、銅板と亜鉛の板をそれぞれ漬けます。銅は薄い硫酸には溶けないので変化ありませんが、亜鉛は水素ガスの気泡を出して、希硫酸に溶けます。希硫酸の入ったひとつのビーカーに銅板と亜鉛板をくっつかないようにして入れ、両方を電球でつなぐと点灯します。 今度は亜鉛でなく銅板の方から気泡が出ます。これが最初の電池で、ボルタが発明したのでボルタの電池と呼ぶと習います。電圧は今の乾電池の1.5Vより低く、1.1Vほどです。

このボルトと言う電圧の単位もボルタの名前が由来です。化学史などの記載を見ると、実際にボルタが作った電池は、ビーカーではなく銅板と亜鉛板の間に硫酸をしみ込ませた紙か布を挟んだものを何組かさらに直列に重ねた円筒状のもので、今の乾電池にずいぶん近いものです。金属のイオン化傾向を習ったと思います。金属は元素によって酸に溶けやすさが異なります。2種類の金属を酸に付けた時、溶けてイオンに成り易い方がイオン化傾向が高いと言います。ボルタの電池に使われている銅と亜鉛では、亜鉛の方が溶けてイオンに成り易いのです。金属が酸に溶けると、電気的に中性の金属は、プラスの電荷の金属イオンと、マイナスの電荷の電子に分かれます。銅板と亜鉛板を酸に漬けると、亜鉛の方がイオンになりやすいので溶けて、亜鉛が溶け出た板には電子が貯まります。

一方銅板は溶けないので電荷は貯まりません。銅板と亜鉛板を導線でつなぐと電子が亜鉛から銅に流れます。電気の流れは電子の流れの逆なので、ここでは銅板がプラス極、亜鉛板がマイナス極になります。これが電池です。プラス極、銅板に流れてきたマイナスの電荷の電子は銅板の周りの液に含まれている希硫酸のプラスの電荷の水素イオンによって中和され、水素ガスに成り気泡を発生します。

乾電池の乾と言う意味は完全に乾燥した粉ではありません。ビーカーの希硫酸を紙や布にしみ込ませた初期のボルタの電池も乾電池の一種です。今の乾電池も完全にドライではなく、電極液を薬品にしみ込ませたペースト状です。そのため電池は劣化すると液漏れを起こします。その後、乾電池はマンガン電池、アルカリ電池と発展しましたが、マイナス極に亜鉛を使う原理は変わっていません。

電池の原理は電解液にイオン化傾向の異なる二つの金属を浸け導線でつないだものなので、溶けやすいアルミホイルと溶けにくい電気を通す木炭でもよいのです。酸の代わりにレモンでもよいのです。果物に銅板と亜鉛板を刺しただけでも電池になります。いろいろ試して実験できます

電池には乾電池のような使い捨てのタイプ以外に、充電できる2次電池があります。これも中学で実験します。今度も希硫酸を入れたビーカーに、2枚の鉛板を入れます。鉛はそのままでは酸に溶けないので変化無しです。2枚とも同じ鉛板で、つないでも電気は流れません。これに今度は逆に直流の電気を流します。電気分解です。すると陽極になった鉛板の表面に変化が起きます。鉛が酸化して2酸化鉛に変わったのです。陰極は鉛のままです。この2酸化鉛の陽極と鉛のままの陰極をつなぐと電気が流れます。充電して初めて使える鉛2次電池です。この実験は実は中学の理科の実験ではあまりやりません。

最初のボルタの電池は、ビーカーに銅と亜鉛の板をサンドペーパーで磨いて入れれば電気が起きますが、鉛電池は準備が必要です。鉛の板のままでは面積が少ないので、釘などを使い、穴をたくさん空けます。さらに鉛板は表面が酸化しているので電気を流しにくいのでサンドペーパーで磨き新鮮な金属の表面にします。実験の前に充電して表面を2酸化鉛に酸化しては、サンドペーパーで磨いて金属鉛に戻す操作を繰り返し、活性化しないとうまく電池になりません。このためこの実験は熟練した理科教師のいるとこでしかできません。

乾電池や小型化したボタン電池には、電解液と陰極、陽極の金属の組み合わせでいろいろな種類ができました。2次電池の方も鉛以外にニッケル、カドミニウムを使ったニッカド電池などができました。ボルタの電池のところで、使っていると水素ガスが発生すると書きました。水素ガスができると反応液から空中に成分が逃げてしまいます。2次電池は電極と電解液の中だけで反応が進むので、放電が終われば、充電で逆に化学反応を進め充電できますが、乾電池ではガスになった水素を元に戻せないので充電して再使用できないのです。(2次電池のように完全に逆反応出来ないだけで、まったく逆反応出来ない訳ではありません。ある程度ならパワーを回復できます。ただし安全のためメーカーは充電しないでと言っています。)

乾電池の進化で、以前リチウム電池がありましたが最近は見かけません。よく似た名前でリチウムイオン電池は今最盛期です。こちらは乾電池ではなく2次電池です。リチウム電池は亜鉛の代わりに金属リチウムを使った乾電池です。一方よく似た名前のリチウムイオン電池は全然別のものです。電極にはリチウムの金属ではなく、複雑な化合物を使っているので、リチウムではなく、リチウムイオン電池と呼んで区別しています。以前は携帯電話やノートパソコンの電源でしたが、現在ではアシスト自転車どころかハイブリッドカーに必須です。このリチウムイオン電池の電極は水と反応するため電解液に水が使えません。そのためリチウムイオン電池の電解液は、何と引火性の有機溶剤です。電池の容器も金属が使えないので、ポリ袋のようなプラスチックの容器です。充電を誤ると発火するので、充電は電子制御の基盤が必要です。穴を開けたり分解などもってのほかです。

ボルタの電池に始まり、鉛蓄電池と、電池は化学の基礎で学ぶ、電池と電気分解の原理そのもので、中学生でも実験出来ました。乾電池は使い方を間違え、直列につなぐ時、中に1個逆向きになっていると発熱しますがせいぜいその程度の問題、それでも丈夫な金属の缶に入っていて、火に入れても釘を打ち込んでも安全です。ところがリチウムイオン電池は個人で作るのは困難、分解は危険です。このような燃えやすい電池を使う必要はあるのでしょうか。自分で修理できない道具は使うべきではありません。【分類:化学】

[ 2016/06/07 ] 『黒姫高原理科教室』 NO125. ボルタの電池

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NO126. おがくず


昔、前の戦争の時、長野県では松根油を採るというか、作ったそうです。松ヤニがよく燃えたり、薪ストーブに松材を入れると油分が多くストーブが焼けるように、松材は油分を多く含みます。戦時中、役人の思いつきで、松の丸太をカットして鉄の窯に入れ、200℃以上の高温で蒸し焼きに(乾留)して油分を抽出します。テレビン油のような精油が採れます。これをガソリンの代用にして戦闘機の燃料にしようと考えたそうで、今も丸太を入れた大きな釜の残骸が残っているようです。200℃以上の相当高温で蒸し焼きにしないと精油分が採れないでしょうから、沸点だけでも100℃以下のガソリンとは比較になりません。もちろん水素添加などしないとオクタン価も不足で、使い物になりません。もうひとつの役人の浅知恵、金属の供出と並んで、お笑いでは済まないバカな歴史です。役人、軍人は本気で考えたのか、承知の上で国民の危機感を煽るためだったのか、いつの世もアホなことをやります。

また針葉樹はパルプ原料になりますが、この時セルロース以外にリグニンと言う成分が針葉樹には多く、パルプ工場からの廃液に含まれ公害の原因になっていました。現在ではこのリグニン成分はパルプ製造の時の燃料に利用されています。

檜などの針葉樹は、ヒノキチオールなどのテルペンと言う化合物を多く含み、樹の香りの成分となっています。針葉樹の葉は油分が多く、広葉樹の葉が落葉してもすぐ腐葉土に変わるのに比べ、なかなか分解しません。黒姫高原でもカラマツの林の落葉は何年もそのまま葉の状態で堆積しています。このように針葉樹は精油分、油分が多いと言われています。

一方広葉樹は、油が少なく、燻製を作る時に使うチップはサクラ、クルミ、楢などの広葉樹の方が余計な油分が燻製に付かず良いようです。このように一般には針葉樹は油分、臭い成分が多く、広葉樹は油分は少なく匂いも少ないと言われています。

先週から薪割りを始めました。先月から黒姫高原のご近所さんから、丸太を切る音や、電動くさびで割る音が聞こえています。梅雨前に済ませたいと山荘でも森林組合に薪用の楢材の丸太を注文しました。チエンソーで切ったおがくずから楢材特有の香りがします。今年の丸太は匂いが強く、風呂に入っても香りが残ります。楢材の丸太も固有の匂いがしますが、おがくずの方が強い匂いです。楢以外の木でも、のこぎりで曳いていると、おがくずから酢酸の匂いがします。今回の楢材のおがくずからは、酢酸以外の酪酸や吉草酸の匂いがします。

こうした酸はカルボン酸といって、セルロースの成分が発酵などで分解した成分です。酢酸は濃いと香りと言うより刺激臭です。酪酸や吉草酸は香りと言うより腐敗臭になります。匂いは不思議で濃い時は嫌な匂いの成分も濃度が薄いと、清涼感を感じたりします。

針葉樹のスーッとする香りに比べ、広葉樹は匂いが無いと言われています。するとこの楢材のおがくずの香りは何でしょうか。広葉樹は樹液を出します。もちろん針葉樹も出します。この樹液の成分は酢酸や糖分です。樹液にはカブトムシや蝶が集まってきますが、これらを捕まえるのに、酢と糖蜜とお酒を混ぜた甘酸っぱい液を作り、樹木に塗っておきます。ただ樹木から出たすぐの樹液は無臭の糖分で、これが微生物によって醗酵するので酢酸などができるお酒や酢の発酵と同じことが起きていると言われています。今回の楢材のおがくずの匂いは時間がたったものではなく、チエンソーで曳いている時からします。

炭を焼く時にできる木搾油の成分は酢酸やフェノール類です。木のチップを容器に入れて空気が入らないようにして100℃以上の高温で蒸し焼きにすると、精油分、酢酸などの水に溶ける成分、タール分が水蒸気と一緒に出てきます。木材にもともと含まれている成分です。おがくずから臭う酢酸臭はこうした木搾油の成分と共通です。しかしそれ以外の香りがまだします。広葉樹は針葉樹に比べ香り成分が少ないと言われますが本当でしょうか。

広葉樹の楠木の樹木を輪切りにして蒸し焼きにすると、強烈な匂いの樟脳がとれます。広葉樹だっていろいろ香り成分が含まれているはずです。そういえばウイスキーを寝かせておく樽はオーク材です。オークって楢材のことです。安物ウイスキーに楢材のおがくずを混ぜると香りが出て、インチキ高級ウイスキーができると聞いたことがあります。楢材にはいろいろな香り成分が含まれていて、おがくずに曳かれると一気に気化するようです。 楢材の丸太には、昆虫が多数くっついています。これらも匂いに曳かれてのでしょう。

杉や檜やサクラの材木は見た目や硬さで区別ができますが、匂いでも結構木材の区別ができそうです。そもそも化学物質で木材由来のものが結構あります。檜からヒノキチオール、桜からクマリン、楠木から樟脳、まだまだ未知の成分がありそうです。【分類:化学】

[ 2016/06/07 ] 『黒姫高原理科教室』 NO126. おがくず

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NO127. 分析教室1回  日立GC163


人類が月面に立ってもう半世紀近くに成りますが、あの頃コンコルドという旅客機が在ったのを若い人は知っていますか。今、軍用機を除いて音速より早く巡航する飛行機は在りませんが、コンコルドは音速の2倍で大西洋を飛んでいました。そう言えば当時のスターのアランドロンが映画で、恋人をパリの空港で見送った後、コンコルドで追い着き、ニューヨークに先回りしている内容の映画がありました。今はアランドロンもコンコルドも過去のもの。飛行機はシャルルドゴール空港の隅に展示されています。

より速くは人類の普遍の希望と思われました。今でも鉄道はより高速化を進めていますが、経済性もあるでしょうが、20世紀後半の文明は、音速の2倍の旅客機は不要と判断したのです。技術的には軍用機は音速の数倍の速度で飛んでいます。しかし一般の社会は或る所で留まる事を知っていたのです。その後、超音速旅客機は作られていません。原発もヨーロッパの多くの国で、無理して動かすものではない、人類には制御し切れない物、要らない物と判断されてきています。早く日本でも要らないものに仕分けして欲しいです。

今でも、一部の文化人、映画監督が愛して止まないゼロ戦、世界に誇る名機だと言われていますが、この国は世界で一番が好きな様ですが、名機か否かは別にしてゼロ戦のエンジンの耐久時間はどれ程だったのでしょう。参考までに現在の飛行機のエンジンの耐久時間はと思ってHPを探すと、ホンダが開発したホンダジェット(エンジンと機体)は、5000時間でオーバーホールでした。ゼロ戦のエンジンは300時間耐久で合格です。(レーシングカーのエンジン並みです。) 飛んでいるより整備の時間の方が長い。映画等で、飛行機の調子が悪く、パイロットが整備士に八つ当たり、徹夜でエンジンを分解整備というようなシーンが浮かびます。運転時間は飛ばなくても、地上で試運転でも経過しますから、調整運転だけで300時間の耐久時間を使ってしまいそうです。当時は300時間前に墜落するからと安心していたのでしょうか。私が長野往復に毎週乗っているホンダ車はもうすぐ30万キロです。この間エンジンは点火プラグを2回交換だけです。多くの日本人は、自動車学校で習った運転前点検をしませんが故障は起きません。

日本人は、物作りの名人と自覚している様ですが、本当でしょうか。 内容が分析化学の従事者向けに成りそうですが、医薬品の成分や、環境分析に使う測定機器にガスクロマトグラフと言う機器があります。私が20代の頃(40年ほど前です)勤めた会社で使ったのが日立163型というガスクロマトグラフです。これは今でも凄い機械だと思います。当時はまだ分析機器の経験が浅く、知らない事が多かったです。子供の頃から、玩具だけでなく、身の回りの機械をまず分解してみるのが習慣でしたので、上司の居ない時に163もさっそく分解です。凄い機械と分かりました。 何が凄いかと言うと、オーデイオで例えれば高級品です。プラスチック製ではなく、金属を加工して作った頑丈なフレーム。パーツも、耐圧110Vを使うか、250Vでは余裕が違います。高級オーデイオアンプは大変重いです。電源部に十分な余裕を持って回路を設計してあるので壊れません。その代わり大きなトランスを使っているのですごく重いのです。163ガスクロも同じ。ダイキャストのボディは叩いても壊れそうもありません。肉厚なので使わなくなったボディは後で踏み台にしました。その代わり重いです。当時の家電製品の様なプラスチックボディではありません。ハンダ付けも丁寧です。性能の前にここまでですでに感心です。

今、電源回路はスイッチング電源に変わり小さくなりました。当時はまだ、トランス方式です。家庭用の交流100Vを電子回路用の直流に直すのが電源回路です。トランスで電圧を下げ、整流器で電流の方向をそろえた脈流を大容量のコンデンサーで平らな直流に変えます。以前5センチほどの立方体だった携帯電話のACアダプターは今はコンセントに差し込むプラグ程度のサイズです。スイッチング回路を使っているからです。内部に重い電源トランスを使わなくなったので、最近の家電製品は随分軽くなりました。

しかし、スイッチング回路はトランスを使わない訳ではありません。電柱の上には今でも送電線から来た高圧電流を家庭用の200Vや100Vに変圧するトランスが乗っています。トランスは鉄芯に銅線を巻いた塊で重いだけではなく資源も使います。電灯線は50または60ヘルツの周波数です。トランスのサイズは使う周波数で決まります。周波数が高いほどトランスは小さくなります。従来使っていた周波数を100倍に高くすると、トランスはたいへん小型になります。この為には周波数を高くする電子回路が必要です。それでも複雑な電子回路で周波数を上げて、小さなトランスを使った方が全体が小型に成ります。ただし今は絶滅寸前のオーデイオマニアやアマチュア無線家は今でもスイッチング電源はわずかにノイズが消せないと嫌っています。オーデイオアンプや無線は大きな電流を流すのでトランスは重いですが、163は検出器に使うだけなので電流は少ないのに、オーデイオ並みの100X200mmの基板全部が電源回路でした。

カラムを一定温度に保つオーブンも比例制御のしっかりした物でした。カラムの入った恒温槽の温度を保つのに電熱線をON OFFしますが、リレーを使うと接点が焼けて数年後に交換が必要になります。163ではこれを機械式リレーではなく、半導体のトライアックを使っていたので丈夫でした。

この163の頑丈な設計の理由が後日解かりました。日立の那珂工場に検査機械の研修に行った時、研修施設の隣の工場の表道路をトレーラに曳かれた電気機関車が突然現れたのです。 「そうか!余所の検査機器メーカーの製品は、アマチュアがプラスチックのケースや薄い鉄板を板金加工してラジオを組み立てるのにそっくりな製品なのに対して、日立163型は電気機関車を作る会社が製造していたからこそ頑丈でゆとりのある作りなのか!」と。もちろん電気機関車は隣の棟で、こちら側では電子顕微鏡や検査機器を作っていました。

163ではFIDという検出器を使っています。カラムの出口に水素とエアーで点火する小さなバーナーを付け、さらに水素炎の上下に電極を付けた複雑な構造で、プレス加工した金属を溶接して作りますが、163ではこれが金属の円筒から旋盤で削って作ったものを組み合わせてあったので丈夫でピタッとです。顕微鏡で高級品は接眼レンズの円筒が本体の筒にスーッと滑って入りますが、安物はガタガタと入る、ちょうどそんな違いです。

性能的に劣化しなくても、減価償却年数とかの理由で検査機器は更新します。同業者が163を買い替えで廃棄すると、そのたびパーツ取り用に頂きました。私が退職するまで163は現役で動いていましたが、その間、数字を表示するネオン管と水素炎バーナーを、確保していたパーツで交換しただけです。私が163を使っていた最後かと思っていたら、最近、日立の検査部門のHPでまだ検査機器一覧表に載っているのを見かけました。作っている方も愛着があるでしょう。

検査機器のメンテナンスを自分でやらない方が増えました。運転中の検査機器を触れば、音や匂いで不具合が分かると言うベテランが昔はいました。マイカーだって、最近は運転前点検はボンネットを開けず、運転席で表示ランプの点灯で確認です。でもタイヤのパンクのチエックくらいしませんか。今のタイヤはチューブレスで釘が刺さっていてもすぐ空気が抜けないから逆に点検が要ります。バイクやチエンソーなどは、メンテの方法のブログがたくさんあります。しばらく実験室向けに分析機器のメンテにかかわる記事を続けます。【分類:化学】

 
[ 2016/06/10 ] 『黒姫高原理科教室』 NO127. 分析教室1回  日立GC163

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NO128. 分析教室2回 島津SIL-10Axl


最近、再就職先の実験室で、工場の製造ラインの模擬試験として実験室の機器を使ってオンラインでの計測方法を開発することに成りました。そのため実験室のHPLCなどのオートサンプラーなどを改造して、現場のラインに合わせます。ここの職場では、すぐ測定機器のメーカーを呼ぶ様です。メーカーから研究部門の担当者が来て打ち合わせ、改造方法が決まりました。研究部門と言っても、化学の基礎研究ではなく製造メーカーです、自社製の測定機器の開発が仕事で、毎日測定機器を動かしているはずです。ところが僕の感覚から言うと驚くべきことが起こったのです。会議室で打ち合わせが終わると実験室で装置を一緒に見たのですが、改造は配管をつなぎ換えたり、余計なパーツをはずすだけで、工具さえあれば部品を取り寄せずにすぐ出来る作業です。ところが担当者は「明日サービスマンをよこして配管を直します」です。もしかしてこの研究部門の担当は、会社でも研究用の測定装置の配管を社内のサービスマンにやらせているのでしょうか。

前の職場では、どこの検査機関でもやっているように検査機器のメーカーや、検査業界団体の行う研修会があり、社員を行かせます。私自身も聞きに行くと言うより、どんな内容を教えているかとか、社内での教育方法の参考にと、たまに参加しました。内容によって、参加者の年齢が異なり、なぜか測定機器のメンテナンス講習では若い子が多いです。検査機器の操作講習会では入門クラス、中級、とメーカーがあらかじめ対象を指定していますから新人が来ますが、メンテナンス講習会ではなぜか若い子が多く、参加した子に聞くと、まだその装置を使い始めたばかりで、上司から行けと言われて来たと言う子が多いようです。その子の職場では上司は機器のトラブルをまだ機器の不具合が何かも分からない新人に対応させるのでしょうか。さらにメーカーでなく業界団体の行う研修会では、1台のデモ機で説明で、これもまた上司から行けと言われて来た若い子が退屈そうに聞いています。一方、検査方法のセミナーなどに管理職っぽいオヤジが参加して、分かったようにうなづいているのを見ると(こうしたものには参加しないので)、なぜ部下の若い子を来させないのかと思います。

自動車学校では、最初のころにボンネットを開けてエンジンオイルの点検方法を教えます。一度ゲージを抜いて、テイッシュでオイルをふき取ってからもう一度差し込んでまた抜き、オイルで濡れた位置からエンジンオイルの量を調べます。私もかって習いましたし、今でもディラーでは同じように調べています。タイヤ交換は私も自動車学校で教わっていません。しかし周りの誰かから教わったものです。最近はタイヤジャッキの収納場所も知らない子もいるでしょう。

検査業界でも、指導する厚生労働省が、分析機器の点検はメーカーに任せる考えです。機器の不具合は使っている本人が一番分かるはずですが、実験室に居ない管理職がデータを見て、精度の管理をする世の中です。さらに恐ろしいのは、実験室どころか、霞が関に居る公務員が、業者のデータを見て、こうしたデータが偏る原因は測定のこの部分を順守しないためで、是正方法はこうだと解説することです。不適合を出した本人は、バカ言うな、原因はわしが報告書1行書きちがえたからだと分かっています。確かに公務員は手先は不器用ですが、書類は書き間違えません。この国では検査業界の測定現場から、今にベテランが居なく成っていきます。

液体クロマトグラフという分析機器があります。よくHPLCと記載します。医薬品や河川水、工場排水中に含まれているいろいろな成分濃度を測定する分析機器です。医薬品などにはいろいろな成分が混ざっています。例えばカフェインなどを単独で溶かした液の濃度を測る方法はいろいろあります。ところが10幾つの成分が混ざった中からカフェインの濃度を測るのは困難です。そこで何らかの方法で溶けている成分を分ける事が出来れば、分離した個々の成分の測定は割と容易です。 HPLCでは、専用のカラムに測りたい成分を含んだ液を流すと、成分によってカラムを流れる時間が異なるので、カラムの出口では成分ごとに分かれて出て来ます。これを検出装置で測るのです。この時カラムに入れる試料を、1ml以下の少量ですが、正確に注入することが必要です。その為の装置がインジェクターです。私が若い頃は手動でした。レオダインという会社のインジェクターを世界中が使っていました。この装置はループと呼ぶ小さなパイプがあり、ここに注射器に似たシリンジで試料を注入します。カラムに入れる試料の量はこのループに入る体積で決まります。普通ループの容積は0.1mlほどの少量です。 しかしループ内を試料で置き換えるため10倍以上の液を流して溢れさせるので試料の量はけっこう要るのです。こうした検査ではサンプルの量は数mlしか無いので貴重です。このループをバルブを切り替えてカラムに繋ぎます。カラムには液を送るため常に高圧がかかっています。そこに注射器で試料を注入することは出来ないのでいったん大気圧でループに注入するのです。その後手打ちの装置は、あらかじめサンプルバイアルに入れておいた試料を自動で注入するオートサンプラーに変わりましたが、仕組みは同じです。この方式をループ式部分注入法と言います。

ループ式では注入量を変えるには、ループのパイプを交換しないといけません。配管は高圧がかかるので、不器用さんには上手く液漏れしないでつなげません。そこでシリンジで吸い込む量を加減して、ループをいっぱいに満たすのではなく、一部だけ満たす方式が出来ました。今でもメーカによってはこの方式があります。ところがこの方式は、注入するより多量の試料を使うので、サンプルの量が限られた貴重な液では困ります。また注入量の精度が悪いのです。シリンジの吸い込む量は以外とモーターの回転する回数で測るので正確です。ところがループの中に吸い込んだ量をバルブを切り替えた時、全量をカラムに送れないのです。いわゆるススギが出来ないので、わずかに配管に残ってしまうのです。正確に注入するためには全量を高圧配管に直接注入しないといけませんが、そのためには接続部の液漏れ対策が必要です。

島津製のHPLCは最近ではLC20シリーズに続きLC30シリーズになり、全量注入が普通になりましたが、当時LC10シリーズではまだ部分注入法式でした。その中で島津SIL10Axlというオートサンプラーは画期的でした。当時島津にも全量注入方式のオートサンプラーがありましたが、研究機関向けのバカでかいサイズです。そこに一般の実験室向けに全量注入方式のSIL-10Axlが出来たのです。SIL-10Axlの注目点はサンプルを吸い込むニードルが高圧配管に接続する部分です。通常は大気圧で注入なのでステンレスのニードルが当たる部分は樹脂のパッキンで十分です。SIL-10Axlではこれをグラファイトの円錐の穴にぴったり合うステンレスのニードルで押さえつける方式です。すごい力で押さえます。一度サンプルバイアルを並べておくプラスチックのケースをうっかりずらせて置いた時、ニードルはケースに穴をあけました。ミシンの針でうっかり掌を縫うようなものです。さらにシリンジを引っ張って液を吸い込むのに、パルスモーターでラセンのねじを回し、微量な量を正確に測ります。アクチューターと言う部品です。ここで、ねじと歯車がかみ合う部分に、いわゆる遊びができ、この隙間が誤差になります。他社ではこの遊びを、油を塗って減らしますが、SIL-10Axlでは雌ねじ側をバネで引っ張って遊びを無くしていました。このやり方は分析機器ではSIL-10Axlだけでしか見かけません。

問題もあります。ニードルがグラファイトに接する部分、ニードルポートと呼びますが、ここがグラファイトが摩耗してカスが詰まるのです。液漏れを無くすのは接触面の一方を柔らかくするのが良い方法なので仕方ありません。その為たいへんメンテナンスが必要なオートサンプラーでしたが、メンテさえしっかりしてあれば他の機器とは1桁精度が優れました。もっともプランジャーシールにカスが貯まったままでは精度が落ちます。その性能に気付かず嫌らったり、使い難いと言う使用者もいた様で、その後製造中止になったようですが、私は島津のHPLC中で最高と思っています。【分類:化学】

 
[ 2016/06/10 ] 『黒姫高原理科教室』 NO128. 分析教室2回 島津SIL-10Axl

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NO129. 分析教室 3回 続島津SIL-10Axl


黒姫高原も春の乾燥シーズンが終わり梅雨入りです。黒姫高原も標高700mを境に、里と森に分かれ、気候にも差があるようです。畑作の出来る里側と違い、標高の高い側では乾燥シーズンが終わると朝夕に霧が発生します。森では日照も吸収され、シダやコケ類が元気です。

黒姫高原の霧や雨などの水分は、植物にとって住み良い環境ですが、街の人はどうして雨を嫌うのでしょう。絹の晴れ着でもないのに、ちょっとした雨でも傘をさします。テレビの天気予報でも帰宅時間の雨降りをすごく気にしています。そもそも雨降りは悪い天気でしょうか。そのくせ猛暑や取水制限は嫌い。雷も怖がる。雨が降っていなくても、レインコートを着て多少の雨では傘をささないというオシャレな人を見かけなくなりました。ペットボトルを飲料水にする都会人は、水道の水源なんて考えないのでしょう。

自転車の傘さし運転はやっと取り締まりになりましたが、昔は傘などさして自転車に乗りませんでした。自転車通学はレインコートです。その点、ロードバイクのウエアーは水着みたいなもの、雨なんて関係ありません。

HPLCの2回目です。引き続き島津SIL-10Axlオートサンプラーです。SIL-10Axlを含むHPLCのシステムでは作動させるのにたくさんのモーターを使っています。移動相を送るためのポンプのモーター以外に、バルブを動かしたり、ニードルの移動に使います。10年以上使っていて、壊れたモーターがあります。デガッサーDGC-4Aのモーターです。デガッサーは、移動相の液中に溶け込んでいる空気を抜く役目です。溶けている空気を抜かないと、配管中で気泡ができ、障害になります。そのため液をポンプで加圧してカラムに送る前に、テフロンの細いチューブを通します。ゴアテックスなどの防水繊維は水は弾いて通さず空気だけ通します。テフロンのチューブも同様で、中に液を通し、外を真空にすると、液に溶けている空気だけが通り抜けるので脱気できます。この時に真空ポンプを動かすのにDGC-4AではDCブラシモーターを使っています。乾電池で動かす模型用のモーターと同じです。長く使っているとブラシが摩耗し動かなくなります。DGC-4Aは使っていると音がうるさいと評判でした。変な音がするようになったので分解すると、モーターのブラシが擦り減って無くなっていました。これ以外のモーターは、ステッピングモーターという物を使っていて、モーターの軸受け以外に摩擦部分が無いので丈夫です。

クロマトパックが出回る前は、ペンレコーダというアナログ出力の記録計を良く使いました。今でもアナログ出力端子があれば使えます。測定器の出力でペンをサーボモーターでY軸方向に動かし、X軸は紙送りで、ロール紙にインクでチャートを描かせます。この時ペンを手で動かすと、少し力が要りますが動きます。手を離すとペンは元の位置に戻ります。サーボモーターは、モーターの回転した位置を検出しているので、ずれても正しい位置に戻ります。動力用ではなく、このように決まった角度だけ動かすためのモーターに、サーボモーターとステッピングモーターがあります。使い道は似ていますが、この二つのモーターは原理が違います。サーボモーターは普通のモーターに位置センサーを付けた物なので、決められた位置からずれるとセンサーが働き、元に戻ります。ステッピングモーターはセンサーがありません。その分、構造が簡単で安いです。モーターは本体側にコイルを60度とかずらして配置してあります。そのコイルに流す電流を順に隣のコイルへと切り替えます。隣のコイルの磁力に引かれ回転軸が60度回ります。軸を2回転させるならコイルを12回切り替えます。サーボモーターは回転するとき以外は電流は流れませんが、ステッピングモーターは電流を止めると位置を固定できないので、回転しない時でも電流をコイルに流して、踏ん張って動かないようにしています。

SIL-10Axlではこうしたステッピングモーターがサンプルを吸い上げるニードルのX,Y,Z軸ごとに1個付いています。また、シリンジを上下したり、バルブを回転するのにも使っています。ステッピングモーターは1回のパルスで回転する角度が正確に決まっているので、これをねじの回転に変えて、そのねじの移動でシリンジを動かせば、とても微量な物でも正確に測り取ることができる、アクチエーターという機構です。ねじ山の遊びを無くせば、正確に0.1マイクロリットル(1mlの1/10000です)まで測りとれます。こうした機構はすでに医療でも少量の医薬品を点滴するなどにシリンジポンプとして利用されています。HPLCでは精度はここではなく、測り取ったサンプルを文字どうり漏れなくカラムに入れることができるかにあります。

従来のループ式や部分注入方式と呼ばれるHPLCのオートサンプラーでは、サンプルを吸い上げるニードルを上下させるのに、ベルトを使って動かします。ベルトなので上下の動作は早く、シャカシャカと動きます。この方式ではサンプルは圧力のかかっていない配管にいったん注入するので、針はニードルポートという穴にさすだけです。ベルトでは力はかけられません。SIL-10Axlはサンプルを高圧配管に直接注入するので針をベルトで押し込むのでは圧力に耐えられません、そこでここでもアクチエータを使います。ステッピングモーターは回転せず静止している時でも、動かないようにコイルに電流を流して踏ん張っています。サーボモーターと違って、静止している軸を手で動かしても簡単には回りません。その代わりモータに触れると分かりますが、年中電流が流れているので熱いのです。

ステッピングモータは摩擦部分がないので寿命が長いはずですが、10年以上使っているとその間ずーっと静止していても電流が流れ発熱しているのでグリスが焼けます。SIL-10Axlではマニュアルにあるプランジャシールやプランジャポンプのカムへの注油以外にこのステッピングモーターのグリス交換をすれば10年以上劣化せず使えました。

前の職場で使っていたG社のオートサンプラには問題がありました。ガラス製のシリンジが頻繁に割れるのです。さらに割れたシリンジを交換する時にもうまく填らず、試運転すると割れるのです。最初は実験の担当者が不器用かと思っていました。自分でやってみて装置の欠陥と分かりました。たまたまG社の技術者が会社に訪問して来る機会がありました。自分がこの装置を作った(作らせたでしょう)という方です。そこで意地悪にシリンジを交換してみてくださいと頼んだところ、彼が不器用だったのか、目の前で割れました。後で請求して下さいと言っていました。取り付けたシリンジが動かないように固定ねじがわざわざ付いていますが、逆に取り付けに遊びがないのです。取り付けた後に動かないようにという発想はあるのですが、取り付けのことは考えなかった。自分で作らない技術者の例です。島津SIL-10AxlではG社と違い、シリンジを填める穴に樹脂を使って遊びがあるので多少不器用な取り付け方でも割れません。

遊びは別にロジェ・カイヨワの「遊びと人間」でなくても、普通に技術者なら機械を作る時に考えることです。 【分類:化学】

 
[ 2016/06/18 ] 『黒姫高原理科教室』 NO129. 分析教室 3回 続島津SIL-10Axl

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NO130. 分析教室 4回 パックドカラムの充填、HPLCカラムの再生方法l


最近見かけなくなりましたが、子供が、自転車がパンクしたので近所の自転車屋に行って修理してもらう風景。自転車屋のオヤジは車軸を外すと時間がかかるので、タイヤを車体に取り付けたまま、中からチューブを引っ張り出し、少しづつずらしては洗面器に入れた水に浸け、釘の刺さった穴から出る気泡でパンクの場所を見つける作業。子どもは興味深く横で見学、小遣い銭で払える額のパンク修理代を払ってまた自転車に乗って行く。少し器用な大人は、水道の水栓のパッキンと自転車のパンクは自分で修理するものでした。自転車愛好家は近所の子供のパンクも面倒を見たものです。ところが当時のロードバイクはチューブラー(チューブレスではありません)と言って、タイヤチューブがゴムタイヤの中に縫い込まれていて、ゴムホースを輪にしたようなものです。縫い目をほどかないと中のチューブを取り出せないのでパンク修理ができません。パンクしたら使い捨てです。一見、タイヤごとリムにはめるので、タイヤ交換が簡単そうですが、レースなどの前には、チューブラータイヤを接着剤でリムにしっかり固定してしまいますので、取り外す時には力が要ります。それでも遠乗りの時は予備のチューブラーを畳んでポケットに入れて乗ります。今ではロードバイクもチューブ入りが多くなりましたが、ゴムのパッチを貼って自分で修理の習慣は戻らないようです。パンク修理は、パンクの穴さえ見つかれば、接着剤でゴムのパッチを貼れば簡単にできます。釘などの刺さった穴を見つけるのに、水に入れて泡の出る場所を探す方法は変わりません。

自動車だってパンク修理の方法は同じでしたが、今の乗用車のタイヤはチューブが入っていません。アルミのホイールに直接、断面がU字型のゴムタイヤをぴったりはめてあります。空気を閉じ込めるチューブが無くても空気は抜けません。チューブは釘穴ですぐパンクですが、チューブが無いこのほうは釘が刺さっても厚いタイヤゴムに釘が締め付けられ、空気がすぐ抜けないので安全だそうです。車載の予備タイヤも最近は無くなり、代わりに空気に触れると固まる液体ゴムをエアーバルブから入れるためのスプレーセットが付いています。修理工場でのパンク修理の方法もゴムパッチではなく、これと同じ方法でタイヤの中に液状のゴムをいれると、パンク穴から噴き出し固化する方法です。簡単すぎますが、ちゃんと直っています。

一般家庭では、水道のパッキンの交換と自転車のパンク程度は自分で修理したいです。実験室では、それ以上に使い捨てが進んでいます。若い子に修理をさせないのは、そんな時間があれば他の仕事をさせた方が効率が良いからか、上司が出来ないから部下にもやらせないからか分かりませんが、自分の使う実験装置の構造は知っているべきです。やれるけど、効率の上で使い捨てにするなら仕方ないですが、分析のプロであるべき実験者が修理はプロに頼むと言った言い方は慎んでほしいです。

多くの実験室にある分析装置として、出回った順にガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフがあります。いずれもカラムというパーツにサンプルと一緒にガスや液体を流し、成分ごとにカラムを移動する時間に差があるのを利用して、カラムから出てきたサンプル中の成分ごとの濃度を測る装置です。分離する成分によってカラムの内部に詰める充填剤を換えます。ガスクロマトグラフのカラムは内径4mmほど、長さ2mほどのガラス管です。長いので電線を巻くように30cmほどの輪に巻いてあります。ガスクロマトグラフの出回った頃は、充填剤は実験者は自分で詰めました。充填したものも売っていましたが、充填剤の種類が多く、実験目的に最適なものを選んで詰めました。

ガスクロマトグラフのカラムの充填剤は、粉ではなく0.5mmほどの粒子です。これをガラス管に詰めるのですが、密に詰めないと、ガスを流して測定しているうちに隙間があいてきます。そこで詰め方にコツがありました。その後登場したHPLCのカラムの充填方法に比べ、GCのカラムの詰め方は至って簡単です。空のガラスカラムと市販の充填剤を用意します。カラムの一端を吸引ポンプとして実験室で良く使う水流アスピレーターに耐圧ホースでつなぎます。この時、充填剤が抜けない様にカラムとゴムホースの間にガーゼを挟んでおきます。カラムの反対側に短いゴムホースを使ってロートをつなぎます。後は吸引しながらロートに充填剤を入れれば空気と一緒に吸い込んで行きます。このままでは充填剤は隙間なく詰まりません。茶筒にお茶を口まで詰めてから、筒をトントンと叩くと隙間ができ まだ茶っ葉が入ります。これと同じで、いったん入口まで詰まったカラムを、吸引しながら振動させます。実験室にも試験管用のバイブレーターがありますが、この時便利なのがマッサージ用のハンドバイブレーターです。数分当てているとしっかり詰まりカサが減ったのが分かります。ガラスのカラムは使っていると取り外しで割れることがあります。当時の実験では、充填どころか折れたカラムをガラス細工でつなぐことも普通でした。

こうして詰めたカラムをパックドカラムと呼びますが、その後ガスクロマトグラフはパックドカラムからキャピラリーカラムに変わり、実験室で充填の習慣は無く成りましたが、公定法でもアルキル水銀の分析など、今でもパックドカラムは使われています。  ガスクロマトグラフが液体クロマトグラフ(HPLC)に変わり、HPLC用のカラムは自分で充填は無理と言われました。実際は無理と言うよりHPLCのカラムは充填済みで売っていて、充填剤だけでは売っていないのです。

液体クロマトグラフに似た物に、カラムクロマトがあります。ポンプなどの機械を使わない、カラムだけの道具です。公定法で、今でもPCBの分析などに使います。これの充填は実験者が自分でします。30cmほどのガラスカラムに細かなシリカゲルの充填剤を詰めるのですが、ガスクロの充填剤と違って、こちらは有機溶剤に充填剤をけん濁してカラムに入れます。スラリーと言われる状態です。この時隙間なく充填する為には、バイブレータではなく、水とタオルです。シリカゲルの粒子は静電気を帯びてカラムの途中で付着してしまいます。充填剤に水分を含ませたり、カラムをタオルで擦って静電気を除きます。

液体クロマトグラフのカラムもこの要領で充填できます。HPLCのカラムはステンレスの内径4.6mm長さ25cmほどの管の内部にシリカゲルの粒子を詰めます。ただし粒子が細かいので隙間なく詰めるのにはバイブレータでは不十分です。メーカーでは高圧充填といって、充填剤を溶剤でスラリー状にした物を圧力をかけた状態でカラムに詰めます。これは専用の機械がないと出来ないと思われています。出来るか否かの前にHPLCのカラムは充填した物しか売っていません。充填剤だけでは売っていないので自分でやれません。

ガスクロマトグラフでは、カラムに流すのはサンプル以外はガスです。サンプルが汚れていればカラムは汚れますが、普段ガスを流すだけでは汚れることはありません。ところがHPLCではサンプルの汚れ以外に、カラムに普段流す液を移動相と呼んでいますが、この中の微粒子などの汚れ以外に、空気や溶かした塩類がカラムを詰まらせます。下手な実験者と優秀な人では、カラムの洗浄方法に差があります。それでもカラムを使い続けると詰まって、液を流すと圧力がかかり過ぎ、使えなくなります。そうなればカラムは使い捨てです。でもカラムって1本5万から20万円するのです。

使用済みカラムを洗浄ではなく、本当に再生する方法があります。2本の使えなくなったカラムから再生品を1本作るのです。HPLCのカラムは購入時にカラムに矢印が書いてあって、移動相を流す方向が決められています。一方方向に使う理由はいろいろあるのですが、汚れは当然、入口側から溜まってきます。細かな粒子は入口の前にあるフィルターに捕まりますが、溶けている汚れは入口側から白い充填剤を徐々に黄色くしていきます。慣れた実験者は、時々カラムを逆につないで流し、入口側に溜まった汚れを逆洗で流し出します。それでも汚れが取れなければ使い捨てです。ここで裏技の登場です。カラムの入口側の充填剤は汚れても、出口側はまだ劣化していません。そこで2本の充填剤の種類の同じ使用済みカラムを使って、1本の入口側の劣化した充填剤をかき出し、代わりにもう1本の使用済みカラムの出口側の充填剤を詰めるのです。乾いた充填剤や、水でけん濁した物を詰めても粒子の間の隙間が残ります。HPLCの充填剤は細かいので通常の詰め方ではだめです。そこで使う方法が砂団子の作り方です。砂と水を混ぜただけの団子は柔らかいですが、握っていると締まってきます。水で溶いたカタクリ粉も同じです。ビル工事でモルタルセメントを型枠に流す時、振動する棒を突っ込んでいるのを見かけます。水で溶いた充填剤をいったんカラムに詰めた後、細いスパーテルでつついて締めてやります。その後しばらくカラムに移動相を流した後、カラムの入口のナットを外し、充填剤が目減りして隙間が出来ていなければ再生品の完成です。【分類:化学】

 
[ 2016/06/18 ] 『黒姫高原理科教室』 NO130. 分析教室 4回 パックドカラムの充填、HPLCカラムの再生方法

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