NO1-NO10

HOME

NO1. 始めるにあたって

黒姫高原で週末を過ごすようになり、気がついたことを自然科学の立場で毎週考えてみます。初めて黒姫の道の駅で水を飲んだ時、大変おいしい水でした。私が今まで暮らしていた金沢市は犀川の水を綏速ろ過した軟水です。となりの白山市は、逆に手取川扇状地の伏流水をそのまま水源にしている硬水です。いづれもおいしい水です。

ところが石川県は手取川にダムを造り大きな県営浄水場で作った水道水を、県内市町村の水道局に水質基準を満たす安全な水として売るようになりましたので、おいしくなくなりました。たいていの大都市はこのような安全だけど、おいしくない水道水です。ところがその後黒姫高原に週末暮らすようになり、信濃町の水道とは水質が異なるのに気付きました。町で飲んだ水道水は軟水でしたが、黒姫高原の水道水を飲むと硬水です。また味から鉄分を多く含んでいるのがわかります。

童話館の近くの池や湿地には褐色の鉄分が底に溜まっていますので、この地区の水源には鉄分が多いことが分かります。なぜ黒姫高原の水道水だけ水質が異なるのでしょうか。黒姫高原から発信されているいくつかのHPを見ると、黒姫高原はおいしい軟水ですと言った記載が目につきます。軟水はおいしく、硬水はまずいの?

しばらく前、駒ケ根の友人の別荘に分析化学の同窓生が集まり、近所のわき水や、市販のミネラルウオーターを集めて、聞き水をしたことがあります。市販の海外の硬水も味見しましたが、分析のプロでも硬水と軟水の区別ができませんでした。結局冷えた水がうまいと言う答えでした。水の味見は難しいものです。長年 水道の水質に関わってきたものとして、黒姫高原の水質について掘り下げてみたいと思います。

[ 2015/07/06 ] 『黒姫高原理科教室』 NO1. 始めるにあたって

TOP

NO2. 硬水、軟水とおいしい水

黒姫高原の山荘で石鹸やシャンプーを使うと泡立ちが悪いです。金沢の自宅ではふんだんに泡が立ちます。さすが犀川の水が水源です。ヨーロッパ旅行の時、安ホテルではボディソープではなく、固形石鹸が置いてあり使っても泡が出ません。またシャワーの後皮膚がつっぱります。たぶんこんなことから硬水に悪い印象を日本人は持っていると思います。

硬水、軟水の差は水に溶けているカルシウムイオンとマグネシウムイオンの量で決まります。カルシウムとマグネシウムは性質が似ているので一緒に行動します。同じように水中にあるナトリウムやカリウムイオンと異なりカルシウムイオンは他のイオンとくっつくと水に溶けなくなります。石鹸が溶けなくなるのもこれです。漆喰もカルシウムです。硬水とはこうしたカルシウムイオンの多い水のことです。厚生労働省がおいしい水の基準を決めています。

その前に水道水には水質基準というものがあります。この範囲内なら毎日飲んでも健康に影響のないという値です。お役所的には水質基準の数値以下なら毎日飲んでもよいわけです。この基準値の範囲内で、特にある成分がこの範囲の時がおいしいという値を決めています。これが国のおいしい水です。この中には硬水も軟水も入ります。普通の人は水の味は、しょっぱい か、金気臭い、程度しかわかりません。カルシウムの味は判りません。

塩分が多いとか、鉄分が多いと味だけでなく水質基準に合格しません。有害物資も大量に含まれれば味や臭気が変わります。ただ 硬水と軟水のどちらがおいしいかと言うと個人差があり、超硬水の炭酸水がうまいという人もいます。

[ 2015/07/07 ]  『黒姫高原理科教室』 NO2. 硬水、軟水とおいしい水

TOP

NO3. 褐鉄鉱の土壌

先日 近所の湧き水の付近で、水芭蕉などの植物園を作っている方の作業を見学しました。水路を作り湧き水を引いているのですが、水面に油膜のようなものがあると言うのです。同じものは童話館の近くの湿地にもあります。油膜に見えるのは鉄バクテリアが繁殖した膜です。試しに油膜なら指を入れれば手の脂で広がりますが、この膜は指ですくえます。鉄分の多い湧き水や湿地では鉄バクテリアと言う、鉄分を養分とするバクテリアが増え、水面に広がり光の具合で油膜のように光ります。

排水溝付近などで、油汚染とよく間違えることがあります。黒姫高原の湿地、湧き水、小川等は鉄分が多い水質の為、たいてい赤茶色の土壌です。黒姫山には昔から鉄鉱石が採れ、製鉄が行われていたことも納得がいきます。こうした褐鉄鉱の地質を通ってきた水は鉄分が大変高く、そのままでは飲用どころか農業用水にも使えません。

そこで黒姫地区に在る池はたいてい人工の溜め池で水の出口には堰が在り、余計な鉄分を沈殿させるようになっています。隣の飯綱のワカサギ釣りで有名な霊仙寺湖も実は巨大な鉄分を沈殿させる溜め池なのです。黒姫高原の水道水に鉄分が多いのもこのためです。ところで水道の水質基準の鉄分の値はどうやって決められたのでしょうか。自宅の井戸水の水質検査を、保健所で依頼された方も居るでしょうが、飲料水として基準値に満たないと不適になる理由の大半は、細菌が出たか、鉄分の超過です。

「鉄分は身体に必要だから多くても良いのでは?」と、不合格通知をもらった方がよく役所に聞きます。答えは、水質基準は飲料水の為だけに作られものでは無いからです。水質基準値は、飲料水の他にも生活全般を考慮して出されているのす。例えば、鉄分が多い水で洗濯すると色が付きますから洗濯屋さんが困る等々・・・・。いずれ水道の水質基準についても考えましょう。

[ 2015/07/08 ] 『黒姫高原理科教室』 NO3. 褐鉄鉱の土壌

TOP

NO4. 信濃町水道

信濃町の上水道は、黒姫山の湧き水を水源(弘法水源)としていて、大変おいしいです。河川水を水源とし、浄水場で水処理するものと違い、そのまま飲用に使えます。信濃町の水道水は、全国的にも硬度の低い軟水と呼ばれるものですが、不思議なことに、同じ信濃町上水道でも、黒姫高原に配水されている水道水は、ヨーロッパ並みに硬度の高い硬水です。

これは 都市部の大河川から水を取り入れ、1か所の大浄水場で作る水道水ではなく、一つの上水道でもいくつかの小さな水源をもっている方式だからです。こうした水道に関する計画や水質は全国の水道局のHPで必ず公開されています。一方、黒姫高原地区は水源として地下のミネラル分を大量に溶かした深井戸を使っています。黒姫山南側と東斜面の地質が異なるため硬度が極端に異なるほか、鉄分やホウ素などの火山成分も溶けています。

童話館とコスモス園の間の黒姫山斜面に水源井戸と第一配水池があります。童話館の駐車場付近には、第2配水池があります。ここから黒姫高原地区に信濃町上水道として配水されています。この様に同じ自治体の水道水が異なった水源を持っている例は珍しいことではありません。どこかの井戸の出が悪くなったり水質が悪化した時は、別の水源に変える事ができます。

私の以前住んでいた金沢市の山の手では、緩速ろ過と言う方法で 巨大な浄水場のろ過池で数日かけてゆっくりと砂でろ過した水道水を利用しています。一方下町は新しい浄水場で薬品を加え、汚れを沈殿させる場所を取らない急速濾過です。水源は同じ犀川の水ですが味が違います。水質基準についてはお役所に任せ、我々はおいしい水について更に考えて行きましょう!

[ 2015/07/10 ] 『黒姫高原理科教室』 NO4. 信濃町水道

TOP

NO5. 黒ボク土は困りもの?

前にも書いた、同じ長野でも南信の駒ケ岳のふもとに暮らす友人の庭に木を植えたときは、駒ケ岳から流れる川の氾濫原で礫ばかりで、土がなく、石の間に腐葉土を集め苗を植えたが水がたまらず枯れそうでした。

 

一方黒姫の家では腐葉土の下は黒い土ばかりで、石が全く見当たりません。家の地下室など、この黒い土がむき出しのところを歩くと、靴の底や周りに細かな土壌が付着してとれません。この靴に着いた土壌を家にもちこむと黒い汚れが床材などに付いて取れません。同じ火山灰からできた関東ローム層が水はけの悪い赤土、粘土に対して、この土は水はけがよすぎるくらいです。黒姫の火山灰と植物の腐食が混ざってできたこの黒い土は黒ボク土と呼ばれています。

 

以前ブルーベリーを金沢で植えたとき、普通作物を育てるときは石灰をまき、土をアルカリ性にしますが、酸性を好むのでピートモスを大量に埋めました。黒ボク土も酸性の土壌です。里の農家も一帯この黒ボク土ですが、ブルーべリーも作っています。

専門の話になりますが、岩石の成分を分析するときは、最近は機器分析と言って、薬品を使わずX線や電子線を当てて測りますが、昔は岩石を熱や薬品ですべて溶かして溶液にして成分を測りました。

一方同じ岩石でも土壌の環境分析をするときは、砂や石に酸を加え周りに着いた汚染物だけを溶かします。砂はビーカーの底に残ったままです。農業化学者はこの中間です。可給態成分と言って、植物が吸収できる成分だけを環境分析屋よりは強力に、鉱物屋のように全部溶かしてはしまわず、酸で溶かします。

黒ボク土も鉱物成分としては肥料成分に富んでいるのですが、火山灰由来のアルミニウムを大量に含みこれがリン酸と結合していて離れず、肥料になりません。それどころかリン酸肥料を撒いても黒ボク土と結合して離れず肥料になりません。

そんな黒ボク土ですが変わった使い道があるのを今の職場で知りました。黒ボク土の吸着性を利用して、活性炭のように有害成分の吸着除去に使えるのです。水道水では有害成分や臭いの除去に高価な活性炭を使っていますが、黒ボク土ならいくらでもあります。酪農のし尿などを黒ボク土を詰めた配管を通すときれいになると言うのです。

[ 2015/07/13 ] 『黒姫高原理科教室』 NO5. 黒ボク土は困りもの?

TOP

NO6. カルキってなに?

水道水の水質基準に、有害成分と並んで、臭い、味のないこと、というものがあります。不思議に思いませんか?水道水はカルキ臭いのに・・・実はこの基準に但し書きがあり、カルキ臭は除くとあります。

日本の水道水は法律でカルキを加えることが決められています。海外ではカルキを使わず、オゾンなどの、臭いの無い薬品で消毒することもあります。日本では消毒にはオゾンなどの併用もできますが必ず消毒に十分な量のカルキを加え、消毒後も蛇口の水に残っていなくてはなりません。(カルキと言う名称は古い呼び名で、化学では塩素または遊離残留塩素と呼びます)

水道屋さんはこの塩素(遊離残留塩素)の臭いを除いて、臭いがしないかを検査しているのです。そんな技ができるのでしょうか?実は水道水にアスコルビン酸(ビタミンCのことです)を加えると、塩素が消えるのです。(水道水のカルキ臭を消すのに蛇口に活性炭のフィルターを着けるのを勧める業者がいますが、塩素が消えると消毒力もなくなり細菌が繁殖しますのですぐに飲んでください。)そうして残った臭いをかぎ分けます。

水道屋さんがカルキ臭と言う言葉を使わない理由がもう一つあります。塩素は細菌を殺す以外に有害物質も分解します。都市の水道水で“高度処理”と言うのを聞きますがこれは決してよりおいしい水と言うのではありません。かび臭などのする水源の水に大量に塩素を加えると有害成分が、汚れた食器を塩素でさらすように、分解します。これを高度処理と言います。

アンモニアなどの仲間とも塩素は結合し分解します。この時塩素の加え方が足りないと臭いがかえって残ります。これを結合型残留塩素と呼びます。これは水質基準ではあってはいけない臭いの成分です。水道屋さんの技はこの両者を区別してカルキ臭と呼んでいます。皆さんの言うカルキとは少し意味が違うのです。

水道水を飲まず、料理にもペットボトルの水を使う人が増えています。ペットボトルの水も作り方で、ナチュラルウオーター、ミネラルウオーターなどの区別があります。いずれも臭いのする塩素ではなく加熱で殺菌している缶詰と同じ食品です。一方水道水は塩素以外の臭いのしない薬品や紫外線での消毒がすでに行われていますが、浄水場での殺菌だけではなく、水道の蛇口から出た後も細菌が繁殖しないように、浄水場から一番遠い蛇口でも塩素が残っているように法律で決められています。今後もおいしい水と塩素の共存は続くでしょう。さらにまた黒姫のおいしい水を求めての考察続けていきます。(これは本来、行政のPRの仕事かな)

[ 2015/07/14 ] 『黒姫高原理科教室』 NO6. カルキってなに?

TOP

NO7. 河川水と地下水、どちらが美味しい?

以前の職場での話だが、実験に使うために実験室の蛇口の水を検査したところ、水道の水質基準にある成分、アセトニトリルと言う溶剤を検出した。会社は郊外の田んぼの中で水道水でなく井戸水を使っている。一体どこから汚染したのか・・・・周りは田んぼに囲まれ、溶剤を使う工場は無い。

かなり離れた山の方には新しいメーカーの工場が在ったが、アセトニトリルは使わない筈だ。この溶剤は実験でも使うのでまさか・・・・。汚染源から推定すると、10年以上前までは、社内でもいISO等の排水規制が弱く、しかも水より重いアセトニトリルの実験排水が、側溝から地下に浸透し、長年にわたり地下に溜まり、それが地下水に含まれて井戸水として汲みあげられた様だ。

会社が建っている土地は白山から広がる扇状地の上に在り、地下には白山の豊富な雪解け水が流れていて、工業用水として利用されている。地下水の流れは地表の河川に比べ大変遅く、時間をかけた分、きれいに濾されている筈だが・・・・確かにその流れはとても遅いようだ。雪解け水が地下水と成り、再度地表に出るには10年以上かかると言う。

水道水の水源は、河川などの地表水と地下水がある。例外的に雨水(天水)や海水もある。地表水は軟水が多く、地下水はミネラルを含む硬水が多い。地表水は河川水だけではなく、湖の水や、河川の底の下の礫層を流れる伏流水もある。地下水は地表近くの流れから取る浅井戸と、不透層を流れる深井戸がある。井戸を掘らすに水脈が地表に出ている湧水も水道の水源になる。

河川や湖を水源にすれば大量の水源水を確保出来るので、都市では大いに利用されるが、地表水は上流に汚染源があることが多い。近所の野尻湖にも長野市の水道の取水口があるが、今は奈良井ダムに水源が変わったようだ。(野尻湖は新潟県に水利権がある様だ)

お隣の飯綱では、河川水を水源にしていて霊仙寺湖の横に浄水場が在るが、川の無い黒姫山や、信濃町の水道は(湧水である弘法の水だけでは水量が不足で、)各地区に深井戸がある。地下水は地表水と異なり、浄水場を造らず塩素消毒だけで飲める。

地下水の方が河川水より綺麗かと言うと、決してそうではなく、地下のミネラル分を溶かす時に有害成分も溶け込んでくる。火山地帯では更にホウ素が溶け込む。地下水の場合、水脈が変わると井戸を変えないといけない。イブモンタンの映画にもそんなのがあったなあ・・・・。日本ではさらっとした軟水の河川水が好まれていますが、海外では地域ごとに異なるミネラルウオーター特有の癖が好まれ、色んな種類が輸入されている様です。

[ 2015/07/15 ]『黒姫高原理科教室』NO7. 河川水と地下水、どちらが美味しい?

TOP

NO8. 黒姫のおいしい硬水?

今はあまり使わなくなったが、魔法瓶の内側に着く白い結晶、カンセキ、と呼びますが、これが水道水中のカルシウム分が沈着したものです。ヤカンでも同じようにカルシウムが析出します。特に健康に問題は有りませんが、これがボイラーでは管が詰まってしまします。そこでカルシウムの多い硬水をボイラーで使うときは、“軟水器”に水を通します。

軟水器はイオン交換樹脂が入っていて、樹脂に蓄えたナトリウムイオンと水中のカルシウムイオンを交換し軟水に変えます。軟水とは単にカルシウム濃度の低い水のことです。逆に水中のナトリウムイオンの濃度は高くなります。このイオン交換樹脂を使っていると樹脂中のナトリウムイオンが無くなり再生が必要になります。再生は簡単、濃い食塩水を樹脂に流せばまた樹脂中のナトリウム濃度が高くなり再使用できます。

軟水器はボイラーには必要です。硬水に慣れたヨーロッパと違い、大量に水道水を消費するアメリカ人はこの軟水器を水道につけて、飲用以外に、洗車(硬水で洗うと水滴中のカルシウムが白く跡が着く)、洗濯に、プールに使うため、再生に使う大量の食塩水を含む排水で下水の水質汚染が起きています。日本でも一般家庭から水道水の検査依頼を受けると、カルシウムが全く無く、かわりに、ナトリウムを大量に含む水質検査結果を見かけます。蛇口に着けるカートリッジでなく、大型の軟水器を水道水に取り付けている家庭が増えているようです。

厚生労働省のおいしい水では、硬度(カルシウム濃度)は低すぎず高すぎずが良いとしています。極端な軟水はコクがなく、高すぎる硬水は苦く、あとは好みです。硬水より軟水が良い!は、ボイラーの話です。いつの間にか各地のブログでは、サラサラ血液同様、サラサラな軟水が良い!が、氾濫。中には用語の意味も知らずにコピペしているのも。

日本では各自治体が、水道水について、水道管理計画と水質検査結果をHPにアップしています。信濃町のHPを見れば、黒姫の水道水が硬水と言うのはすぐ判ります。黒姫高原理科教室にひと月参加いただければデータの読み方分かります。ただし、おいしい水を感じるのはデータではなく、自分の舌です。黒姫のおいしい軟水と言う記載を見かけますが、今回のタイトルは正反対です。

[ 2015/07/16 ]『黒姫高原理科教室』 NO8. 黒姫のおいしい硬水?

TOP

NO9. 水道水の味見の仕方

水道水の水質基準の中に、臭い、味の項目があります。基準は異常な味、臭いがないことです。水質試験での臭い、味は、サンプルの水をきれいなガラス容器に入れ50℃に加温してから口に含み飲まずに味見、栓付の容器に半分ほど入れ同じく50℃に加温し、よく振ってから栓をとって中の臭いをかぎます。味は、異常の無いこと、と言う判定で細かな何味と言う判定はできません。

他方 臭気については細かな区別ができます。魚臭いとか、土臭とか、草の臭いとかで、判定します。あくまで異臭です。前に書いたように消毒のカルキ臭は除きます。水質基準にはカビ臭と言う項目もあります。かび臭とはジオスミンとかMIBと言う化学物質で、湿ったまま放置した雑巾の臭いです。これは実際には微量な濃度を測れる機器で臭いでなく成分濃度を測り判定します。

もう一つ臭気強度(TON)と言う項目があります。水道ではなく排水では以前は悪臭物質濃度と言って、アミンと言う成分(腐った魚臭)濃度を測っていましたが、悪臭成分は色々あるので特定の成分ではなく、異臭の強さを測るようになりました。水道水も同様にTONを測り判定します。

TONを測るときは、試験室で異臭のするサンプルを薄めて行き、どこまで薄めたら、嗅ぎ分けられなくなるかを何人かにやってもらいます。その中で一番臭覚の悪い人と、鋭い人を除き、あとの人で何倍まで薄めたら異臭を感じ無く成るか、の平均を出し、判定します。水の臭いがあると言う時、多くは容器などの匂いです。ですから臭気の判定時には飲食、化粧などは禁物です。

水道水質基準の多くの項目は大変微量な成分を測定、判定しますが、対象は健康に影響のある成分です。これらの成分は基準値を超えて存在すれば異臭、異常な味の原因にもなります。水質基準でのおいしい水とは、異臭 異常な味のしない、まずくない水と言うことであり、特に『美味しい水!』と言った判定基準は有りません。兎に角、『何が美味しいか!』は個人差があり、また先入観や温度、体調により変わります。

[ 2015/07/16 ]『黒姫高原理科教室』 NO9. 水道水の味見の仕方

TOP

NO10. 隣の芝生

信濃町の水道水は、黒姫高原の深井戸の水源以外はほとんどが弘法湧水で、これを消毒だけして配水しています。これ以外の浄水場で河川水を配水しているのは給水量全体の数%です。一方お隣の飯綱では給数量の半分を霊仙寺湖横の浄水場でまかなっています。地下水では無いので、浄水場でろ過した後、消毒、給水します。水道の水源は主な種類が3つ。河川や湖沼やその伏流水を使うものと、深井戸や湧水などの地下水を使うものです。もう一つは県営水道などからパイプを引いて水を買うこと。水源に恵まれない自治体では、これが意外と多いです。

河川水は浄水場で、砂や粘土などの濁りや有機物を除きます。その方法は、薬品を使わず砂の層と微生物の膜でゆっくり時間をかけて(砂の層を通過に1日かける)行う緩速ろ過と、薬品を加え汚れをフロックと言う塊にして、プールのろ過装置と同じように処理する急速ろ過があります。古くからある老舗の浄水場は緩速ろ過ですが、新しいものは急速ろ過が多くなりました。昔は無かった有害成分を除去するためには薬品を加え処理しないと除去できません。それでもフッ素とかホウ素と言った成分は除去で来ません。緩速ろ過は昔の水源のきれいな時代に作られたもので、汚染した水源には向いていません。

地下水の場合、水源がきれいなので消毒するだけで、特に処理はしません。広い土地の要る浄水場の移転は難しいですが地下水の水源は、水質が変われば移転できます。沢が少ないが、水は豊富で湧水の多い黒姫山では地下水、湧水を水源として浄水場が無い配水池だけの上水道、沢や河川の多い飯綱山では浄水場方式、水質が良いので緩速ろ過ですからおいしいはずです。隣り合った水道水ですが、対照的です

[ 2015/07/16 ] 『黒姫高原理科教室』 NO10. 隣の芝生

TOP


Copyright (C) 2015 黒姫高原理科教室. All Rights Reserved.

inserted by FC2 system